院内環境ラウンド・耐性菌監視ラウンドとは?感染制御における薬剤師の役割
🏥 院内環境ラウンドとは?
院内環境ラウンドとは、医療機関内の環境(病室、処置室、トイレなど)を回りながら、感染リスクの有無や清掃・消毒の状況をチェックする活動です。当院では手指消毒用アルコールの使用状況、衛生状態に関して力をいれて監視しています。感染対策チーム(ICT)や多職種(医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師など)で行います。
■ 主なチェックポイント
- 手指衛生(アルコール消毒剤の配置と使用状況)
- 高頻度接触面(ドアノブ、ベッド柵など)の清拭
- 個人防護具(PPE)の使用・廃棄方法
- リネン・排泄物の処理手順
- ゴミの分別・廃棄ルールの遵守
- 点滴ルートが床についていないか確認
- バルーンバックが床についていないか確認

点滴ルートやバルーンバックが床についていると、点滴刺入部からの感染や、尿道からの汚染のリスクがあがってしまうんだ。
■ 薬剤師の関与ポイント
- 消毒薬・洗浄剤の適正使用状況の確認
- アルコール手指消毒剤の残量チェックと補充提案
- 消毒剤の使い分け、濃度、使用期限の管理
🦠 耐性菌監視ラウンドとは?
耐性菌監視ラウンドとは、MRSA、ESBL、CRE、VREなどの多剤耐性菌が検出された患者について、感染対策(伝播、抗菌薬使用)が適切に実施されているかを確認する活動です。
実際は、臨床検査技師から耐性菌保有患者を抽出してもらい、抗菌薬使用歴、発熱状況などをラウンド前に調査します。同室に複数名の耐性菌患者がいれば、必要に応じて遺伝子検査なども必要です。患者のみならず医療従事者が「伝播」の基になりえること忘れてはいけません。
■ 主な目的
- 標準予防策・接触予防策の実施確認
- 個室隔離・コホート隔離の状況確認
- 関係スタッフへの情報共有と教育
- 必要に応じて環境培養・実施率の評価
- 抗菌薬が適正使用されているか確認
■ 薬剤師の関与ポイント
- 抗菌薬の適正使用状況の確認(過剰・過少投与)
- 治療法の検討やデエスカレーションの提案
- 感染拡大リスクの評価と助言

当院では、患者さんに触れることが多い「看護師」、「リハビリテーションスタッフ」に対し「耐性菌保菌患者」である旨を患者ベットサイドに表示し、ケア後やリハビリ後に手指消毒用アルコールをしっかりするように指導しているよ。
📊 まとめ
ラウンド名 | 主な目的 | 薬剤師の役割 |
---|---|---|
院内環境ラウンド | 病院内の衛生状況と感染予防策の実施確認 | 消毒薬管理、衛生用品の配置、使用状況の確認 |
耐性菌監視ラウンド | 耐性菌感染者の管理と感染拡大防止 | 抗菌薬使用の確認、隔離・対策のチェック |
院内環境ラウンドと耐性菌監視ラウンドは、いずれも「現場を歩き、確認し、チームで連携する」ことが基本となる活動です。薬剤師が複数名でICTに関わっている場合は、両方のラウンドに積極的に参加することが望ましいですが、薬剤師が1人で活動する場合は、どちらか一方に絞らざるを得ません。
そのような状況では、院内環境ラウンドは他職種に任せ、薬剤師は耐性菌監視ラウンドに注力することが望ましいと考えられます。薬剤師は、抗菌薬や消毒薬に関する専門知識を活かし、耐性菌対策の中核を担うことができます。感染制御チームの中で、薬剤師がその専門性を発揮することは、チーム全体の感染対策の質を高めるうえでも重要です。
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