1. はじめに:2026年、肺炎球菌ワクチンの制度が大きく変わります
日本人の死因第5位となっている肺炎。その主な原因菌である「肺炎球菌」から身を守ることは、健康寿命を延ばすために非常に重要です。
肺炎球菌は、実は子どもたちが喉や鼻に持っていることが多い菌です。お孫さんと楽しく過ごす時間も、ご自身がワクチンで守られていれば、より安心なものになります。ご自身のため、そして大切なご家族のために、2026年4月からの大きな制度変更について一緒に整理していきましょう。
これまでは「5年ごとの再接種」が一般的でしたが、2026年4月からは**「一生に一度の接種で効果が持続する」**高品質なワクチンが定期接種(公費助成)の主役へと変わります。
2. 【2026年4月からの大変更】定期接種のワクチンが「プレベナー20」へ
2026年4月1日を境に、高齢者の定期接種で使用されるワクチンがこれまでの「ニューモバックスNP(PPSV23)」から、最新の**「プレベナー20(PCV20)」**へと完全に切り替わります。
正式名称は「沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)」。これは小児の定期接種で使われているものと同じ、優れた「結合型」という種類のワクチンです。これまでの高齢者用ワクチンよりも高い予防効果と、長期の持続性が認められたため、国の新しい標準として採用されることになりました。
3. なぜ「結合型ワクチン(PCV)」は一生ものなのか?
なぜ新しいワクチンは「一生に一度」で済むのでしょうか。それは、従来の「多糖体ワクチン(PPSV23)」と、新主流の「結合型ワクチン(PCV20/21)」では、免疫の作り方が根本的に異なるからです。
結合型ワクチンには、免疫システムに敵の姿をはっきりと認識させるための**「エスコート役(キャリアタンパク質)」**が含まれています。
- 従来のPPSV23(ニューモバックスNP):
- 免疫細胞のうち「B細胞」のみを活性化させるため、免疫の記憶が作られにくい。
- 効果は約5年で減衰し、5年ごとの再接種が必要になる。
- 新世代のPCV20/21(プレベナー20・キャップバックス):
- エスコート役の働きで「ヘルパーT細胞」を活性化し、**「メモリーB細胞」**という免疫の記憶をしっかり形成する。
- 免疫記憶が作られるため、原則として一生に一度の接種で効果が持続する。
- 将来、菌が侵入した際に「ブースター効果」によって素早く強力な免疫反応を起こせる。

4. 最新の選択肢「キャップバックス(PCV21)」の実力
2025年10月に発売された最新ワクチン**「キャップバックス(PCV21)」**は、成人の肺炎球菌感染症をより強力に防ぐために設計された、世界初の「21価」結合型ワクチンです。
定期接種の標準となるプレベナー20と比較して、以下のような成人・高齢者に特化したメリットがあります。
- 圧倒的なカバー率: 成人の深刻な「侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)」の約80.3%に対応。さらに、一般的な「市中肺炎」の原因菌も71.9%(2024年データ)という高い割合でカバーしています。
- 流行の変化に強い: 近年日本で増加している血清型(15A、35Bなど)に対応。プレベナー20には含まれない11種類もの血清型(16F、23A、23B、24F、31など)をカバーしているのが最大の特徴です。
- 成人のための専門設計: 小児に多い型を削り、その分「大人が特にかかりやすい型」を重点的に追加しています。

5. 【比較表】主要な3つのワクチンを徹底比較
2026年4月以降の状況に基づく比較表です。
| 商品名(略称) | 種類 | カバー菌数 | 定期接種の対象(2026年4月〜) | 特徴 |
| プレベナー20 (PCV20) | 結合型 | 20種類 | 対象(標準) | 1回で一生持続。小児の定期接種でも使われる信頼の標準型。 |
| キャップバックス (PCV21) | 結合型 | 21種類 | 任意(将来の定期化に期待) | 成人特化の最新型。 国内の流行株へのカバー率が最も高い。 |
| ニューモバックスNP (PPSV23) | 多糖体 | 23種類 | 終了(2026年3月末まで) | 前時代の基礎。網羅性は高いが、5年ごとの再接種が必要。 |
6. 【自分はどれを打つべき?】接種ルート別ガイド
ご自身の状況に合わせて、最適な選択肢を確認しましょう。
- パターンA:初めて接種する65歳の方
- 自治体の助成を利用して**「プレベナー20」を定期接種**するのが最もスムーズです。自己負担を抑えつつ、一生ものの免疫を獲得できます。
- パターンB:過去にニューモバックス(PPSV23)を打ったことがある方
- 前回の接種から1年以上あければ、プレベナー20やキャップバックスを接種可能です。
- 【プロの視点】 従来のPPSV23で広く網羅した後に、最新のPCV21を重ねて打つことで、現在考えうる「最強の守り」を固めることができます。
- パターンC:より高い予防効果を求める方
- 定期接種の対象であっても、あえて自費(任意接種)で**「キャップバックス(PCV21)」**を選択するルートです。喘息やCOPDなどの持病があり、最大限の守備範囲を確保したい方に強く推奨されます。


7. 助成金と費用について
2026年4月以降、定期接種の対象者(65歳の方、および60〜64歳の特定の基礎疾患保有者)には公費助成があります。
- 定期接種(公費助成あり): 自己負担額は自治体により異なりますが、3,400円程度(登別市の例など)になる見込みです。
- 従来の2,400円程度から約1,000円の値上げとなりますが、これは「結合型(PCV)」という高度な技術を用いたワクチンのためです。5年ごとの再接種費用がなくなるため、長期的には大きな節約になります。
- 任意接種(全額自己負担): キャップバックスなどの最新ワクチンを自費で打つ場合、相場は11,000円〜15,000円程度です。
8. おわりに:早めの相談が健康寿命を延ばす鍵
肺炎球菌ワクチンの制度は、これまでの「回数を重ねる」形から、「質の高い1回で長く守る」形へと進化しました。
2026年3月末をもって、従来のニューモバックスNPの取り扱いを終了するクリニックも増えています。制度が複雑で迷われるかもしれませんが、ご自身の接種歴や体調に合わせて最適なタイミングを選ぶことが大切です。
納得のいく選択をするために、まずはかかりつけ医にご相談ください。早めの確認が、あなたと大切なご家族の笑顔を守る第一歩になります。

参考
厚生労働省 肺炎球菌ワクチン

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