はじめに
当院では、公益財団法人 日本医療機能評価機構が実施する**病院機能評価(3rdG:Ver.3.0)**を受審しました。今回で4回目の受審となります。
病院機能評価は、病院の質改善活動を支援するための制度であり、我が国の病院を対象に、組織全体の運営管理および提供される医療の質について、中立的かつ専門的な立場から評価が行われます。認定を受けることで、病院として「一定の医療の質が担保されている」ことを対外的に示すことができます。
本記事では、感染制御認定薬剤師の立場から、ICTおよび薬剤部門として実際に対応した内容を、備忘録も兼ねてまとめます。これから病院機能評価を受審される施設の参考になれば幸いです。
1.準備から受審当日までの流れ
① 受審半年前
院内実行委員会が立ち上がり、師長・課長等の管理職を中心に役割分担が行われました。私は**感染制御部門(ICT)**の担当となり、薬剤部門については薬剤部長が主担当、私は情報共有という形で関与しました。
② 受審2.5か月前
ICTが担当する評価項目は以下の4項目です。
- 1.4.1 医療関連感染制御に向けた体制が確立している
- 1.4.2 医療関連感染制御に向けた情報収集と検討を行っている
- 2.1.9 医療関連感染を制御するための活動を実践している
- 2.1.10 抗菌薬を適正に使用している
ICT看護師とともに、まずは前回受審時の指摘事項の整理と改善状況の確認から着手しました。
当院における主な課題は以下の通りでした。
- 1.4.1:現状で大きな問題なし
- 1.4.2:SSI、CLBSI、CAUTI、VAP等の発生状況の把握・評価
- 2.1.9:現状で大きな問題なし
- 2.1.10:アンチバイオグラム※の利活用、術前予防抗菌薬の把握、追加投与に関するガイドライン整備
これらについて、J-SIPHEを活用したデータ整理・可視化を中心に準備を進めました。
※アンチバイオグラムの利活用についてはこちらのブログも参照★
感染制御認定薬剤師が解説 臨床で活用されるアンチバイオグラムの作成と運用
③ 受審2週間前
サーベイヤーが必要な情報をすぐに確認できるよう、評価項目番号ごとに資料ファイルを作成しました。ファイルに収まらないマニュアル等については、「別にあり」と明記し、該当番号の付箋を貼付しました。
④ 受審日前日
作成したファイルを再度確認し、
- 番号の誤りがないか
- 資料の不足がないか
をチェックしました。また、当日の進行を想定し、提示資料の控えを手元用として準備しました。
⑤ 受審当日
朝一でサーベイヤー(事務系2名、医師2名、看護師2名)を迎え入れました。サーベイヤーの方々は職員との顔合わせ前に、会場で事前打ち合わせ、資料確認、ケアプロセス症例の確認が行われました。
2.受審1日目の対応

機能評価機構ホームページより
① ICT部門:領域別面接調査(1.1/1.3/1.4/1.5)
事前提出資料をもとに、不明点の聞き取りが行われました。主な質問内容は、
- ICTの組織構成
- 感染対策向上加算の算定状況
などでした。詳細な確認は2日目の部署訪問で行われるため、1日目は比較的簡潔なやり取りにとどまりました。
② 薬剤部門:ケアプロセス症例調査(2症例)
ケアプロセス症例調査では、患者の入院から退院までに多職種がどのように関与したかが詳細に確認されます。
ここで特に重要なのは、
「説明できること」=「実施していること」ではなく、カルテ記載がすべて
という点です。
薬剤部門としては、以下のような点について質問を受けました。
- 入院診療計画書への薬剤師記載
- せん妄リスク評価への関与
- 持参薬鑑別の方法
- 服薬指導の内容・回数
- 処方薬の配薬カートへのセット方法
いずれも日常業務の範囲内であり、特に困る質問はありませんでした。
③ 病棟ラウンド対応
病棟では、環境・物品管理全般について確認が行われました。
薬剤部門として対応した主な項目は以下です。
- 救急カートの内容・点検体制
- 配薬カートの使用方法
- 麻薬金庫の管理手順
- 向精神薬の保管方法
こちらも、通常業務の説明で問題ありませんでした。
3.受審2日目の対応

病院機能評価ホームページより
① 部署訪問(医療安全部門/感染対策部門)
1時間で2部門の訪問があり、ICTとしては約30分の対応でした。主な質問内容は、
- 病院としてのアウトブレイク定義と最近の事例
- 抗菌薬投与後の患者状態確認(アレルギー等)がマニュアルに明記されているか
- 抗菌薬使用届の運用状況
- SSIサーベイランス対象手術の把握状況※
- PPEマニュアルの整備状況
- 手指消毒薬の使用量サーベイランス
当院では明確なアウトブレイク定義がマニュアルに記載されていなかった点が指摘事項となり、今後の課題となりました。
※SSIサーベイランスについてはこちらのブログも参照★
SSIサーベイランスにおけるリスクインデックスとJ-SIPHE入力項目の実践解説
② 部署訪問(薬剤部)
薬剤部では、
- 処方から投薬までの流れ
- 向精神薬・麻薬の管理方法
- 錠剤分包機の運用と補充方法
- 麻薬金庫および鍵の管理方法
について説明しました。
指摘事項としては、麻薬金庫の鍵の管理方法でした。他の鍵と一緒に保管していたため、
麻薬金庫の鍵は別管理とし、所属長が常時所持することが望ましい
との指摘を受けました。保健所監査では指摘されていなかった点であり、今後の検討課題です。
4.講評と振り返り
大きな混乱もなく、準備した資料をもとに質問には十分対応できたと感じています。CLBSI、CAUTI、VAPについてはデータ収集に苦労しましたが、今回は詳細な質問対象とはなりませんでした。
ICT部門
前回受審時の指摘事項を十分に改善できなかった反省はありますが、今回はJ-SIPHEを活用したサーベイランス入力により、データを可視化できた点は大きな成果でした。
薬剤部門
マニュアル整備を中心に、薬品採用・見積・購入関連書類の整理を行いました。サーベイヤーに薬剤師がいなかったこともあり、専門的な突っ込みはありませんでしたが、日頃の整備の重要性を再認識しました。
おわりに
病院機能評価を通じて、医療安全部門・感染対策部門の体制整備が病院全体の評価に直結することを改めて実感しました。
本記事はほぼ個人的な備忘録ですが、これから受審を控えている施設や、ICT・薬剤部として関わる方の参考になれば幸いです。


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