子どもの風邪薬・喘息薬・アレルギー薬は余っても自己判断で使わないで!薬剤師が、使用期限・保管方法・水剤や座薬の扱い方、再利用の危険性をわかりやすく解説します。
はじめに:子どもの薬、余ったときどうしてる?
お子さんの体調が悪くて病院で出された薬。「ちょっと余ったから、次に風邪をひいたときに使ってもいいの?」と思う方も多いのではないでしょうか。
実は、子どもの薬を自己判断で再使用するのはとても危険です。薬はその時の体重や症状に合わせて処方されているため、前回と同じ薬でも「今の病状」に合わないことがあります。
私は薬剤師になって十数年、このような相談を年に何回もうけます。以前に受診した時の薬が余っているから使っていい?こんな症状なんだけどいいよね?このような感じです。
なぜ余った薬を使ってはいけないの?
子どもの薬は、医師と薬剤師が体重・症状・年齢に合わせて用量を調整しています。
同じ「風邪」でも、症状や体重によって必要な薬は違います。
- ウイルス性の風邪:抗菌薬は不要
- 喘息発作時:風邪薬で悪化することも(咳止めや解熱鎮痛薬)
- アレルギー症状:年齢で使える薬が異なる
そのため、「前回と同じ薬を少し残しておこう」はNGです。安全のため、医師・薬剤師の指示に従って使い切るようにしましょう。
水剤(シロップ)は再使用NG!
小児でよく処方される水剤(シロップや懸濁剤)は特に注意が必要です。
- 開封後は細菌が繁殖しやすい
- 成分が沈殿・変質することがある
- 飲み口からの唾液混入で劣化する
そのため、飲み残した水剤は再使用せず廃棄が原則です。
坐薬(座薬)の扱い方と保管方法
発熱時に使うことの多いアセトアミノフェンの座薬は、冷蔵庫での保管(冷所保存)が基本です。常温では溶けやすく、形が崩れてしまうことがあります。夏場の保管は必ず冷蔵庫です。
- 冷蔵庫(1〜15℃)で保管
- 凍らせるのはNG(成分変化や割れやすくなる)
- 変形・変色していたら使用しない

変形した坐剤を使用することにより、肛門を傷つけてしまう可能性があります。
薬の使用期限の目安
| 薬の形状 | 使用期限の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 錠剤・カプセル | 製造から約3年(未開封) | 湿気で劣化しやすい |
| 粉薬 | 受取後1〜2か月以内 | 湿気・光に注意 |
| 水剤(シロップ) | 受取後1〜2週間 | 冷暗所保管、再使用NG |
| 座薬 | 製造から約3年(冷所) | 変形・変色したら使用しない |
薬の正しい保管方法
薬は光・湿気・高温に弱いです。保管場所を誤ると、成分が分解することがあります。
温度変化が少ない場所で吸湿剤を入れた缶やジップロックに入れられればBestですね。
おすすめの保管場所
- 直射日光の当たらない引き出しや棚の中
- 車内や窓際など高温になる場所は避ける
- 湿気の多い洗面所・台所はNG
冷蔵庫に保管する薬
座薬や一部の水剤など、「冷所保存」と書かれている薬は冷蔵庫へ。必ず薬袋のラベルを確認しましょう。
解熱薬はアセトアミノフェンだけに
小児の解熱剤はアセトアミノフェンが第一選択です。安全性が高く、乳幼児にも使用可能です。
| 成分 | 使用可否 | 備考 |
|---|---|---|
| アセトアミノフェン | ◎ 使用可 | 安全性が高く小児に推奨 |
| イブプロフェン | △ 医師指導下で使用 | ウイルス感染時は注意 |
| ロキソプロフェン | × 使用不可 | 小児・インフルエンザ時はNG |
小児でよく処方される薬の解説
カルボシステイン(商品名:ムコダインなど)
痰をやわらかくして出しやすくする薬です。副作用が少なく、小児でもよく使われます。風邪や副鼻腔炎など、痰が絡むときに処方されます。
トラネキサム酸(商品名:トランサミンなど)
のどの痛みや腫れを和らげる薬で、抗炎症作用があります。風邪や扁桃炎、咽頭炎などで使われることが多いです。
チペピジンヒベンズ酸塩(商品名:アスベリンなど)
咳をしずめる鎮咳薬です。中枢に作用し、強い咳を抑えます。眠気は少なめですが、長期使用は避けましょう。
ジメモルファンリン酸塩(商品名:アストミンなど)
咳を抑える薬で、比較的安全に使える鎮咳成分です。眠気も少なく、幅広い年齢で使用できます。
デキストロメトルファン臭化水素酸塩(商品名:メジコンなど)
市販薬でもよく含まれる鎮咳薬です。咳を鎮めますが、過量摂取は避けましょう。
アレルギー薬・鼻水・くしゃみの薬
アレルギー性鼻炎や花粉症、風邪の後半でよく処方される薬には、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬があります。
抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンなど)
くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状を抑えます。第一世代(眠気が強いタイプ)と第二世代(眠気が少ないタイプ)があります。
- 第一世代:ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンなど(眠気が出やすい)
- 第二世代:フェキソフェナジン、ロラタジン、エピナスチンなど(眠気が少ない)
眠気が強い薬は、就寝前の服用が適しています。
ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト、プランルカスト)
鼻づまりやアレルギー症状を改善する薬です。毎日服用して体質を整えるタイプで、アレルギー性鼻炎や小児喘息にも使われます。
- 即効性はないが、継続で効果が出る
- 眠気が少なく、日常生活に影響しにくい
余った薬の正しい処分方法
余った薬は、薬局で相談するのが安全です。特に水剤や抗菌薬、座薬は再利用せず廃棄が原則です。薬剤師に確認してから処分しましょう。
まとめ:子どもの薬は「そのときだけ」使うのが安全
- 余った薬は再使用しない
- 水剤は特に再使用NG・短期間で使い切り
- 座薬は冷蔵庫で保管
- 使用期限は製造から2〜3年(開封後は短い)
- 解熱剤はアセトアミノフェンのみ使用
お子さんの薬はその時の体調に合わせて処方されるもの。使い方に迷ったときは薬剤師に相談するのが安心です。


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