前回の記事で、機械式時計の神髄ともいえる「トゥールビヨン」の魅力をご紹介しました。今回はその続編として、三大複雑機構のひとつ「パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)」を取り上げ、類似機構である「アニュアルカレンダー(年次カレンダー)」との違いや凄さを掘り下げてみたいと思います。
そもそもカレンダー機構って何?
時計における「カレンダー機構」とは、日付、曜日、月、年などの表示を自動で行うメカニズムのこと。腕時計の定番でもある「デイト表示」はその最もシンプルな形です。
しかし、2月の28日やうるう年など、月ごとの日数が異なるカレンダーを正確に表示させるには、単純な機構では不十分。ここで登場するのが「アニュアルカレンダー」と「パーペチュアルカレンダー」です。
アニュアルカレンダーとは?
アニュアルカレンダーは、30日と31日の月を判別し、1年に1回だけ──2月末に手動調整を行えばよいという機構です。つまり、うるう年には対応していませんが、残りの11ヶ月は全自動。
1996年にパテック・フィリップが初めて実用化し、比較的新しい機構でもあります。
部品点数が少なく、薄型設計が可能なため、デザインの自由度が高く、価格も比較的抑えられているのが特徴です。実用性とエレガンスを兼ね備えた、いわば「賢いカレンダー」ですね。

出典:https://patekphilippe-boutique.com/collection/m-complications-02.html
パーペチュアルカレンダーとは?
一方のパーペチュアルカレンダーは、うるう年を含めて日付を正確に自動調整してくれる超絶技巧の結晶。
2100年まで調整不要と言われており、4年に1度の2月29日も自動で判断します。その構造は極めて複雑で、数百のパーツが精緻に組み合わさる様は、まるで「機械式コンピューター」。
職人の手作業なしでは組み上げられず、まさに時計界の叡智の集大成とも言えます。

出典:https://www.audemarspiguet.com/com/ja/collections/royal-oak-collection.html
実用性 vs 機械美の極致
アニュアルカレンダーは現代的な実用機構、パーペチュアルカレンダーはクラフツマンシップとロマンの象徴。日常使いではアニュアルが便利かもしれませんが、時計愛好家にとっては、パーペチュアルの「機械が時間を理解している」感覚こそが魅力です。
例えば、ランゲ&ゾーネの「ランゲ1・パーペチュアルカレンダー」や、オーデマ・ピゲの「ロイヤルオーク・パーペチュアルカレンダー」は、その技巧と美しさで世界中の時計ファンを魅了しています。
まとめ:どちらも“カレンダー”だけど、その奥深さは別物
アニュアルカレンダーとパーペチュアルカレンダー。どちらも一見“カレンダー表示機構”ですが、その精度、構造、哲学には大きな差があります。
前者は日常に寄り添う「賢い相棒」、後者は時を超えて輝き続ける「芸術品」。
もしあなたが機械式時計の真の魅力を知りたいのなら、ぜひ一度、パーペチュアルカレンダーの動作を間近で見てみてください。カレンダーが「生きている」と感じられるはずです。
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