2025年流行 マイコプラズマ肺炎と百日咳 ― 原因から予防まで徹底比較

感染症

最近、学校で百日咳マイコプラズマ肺炎が流行しています。
私の周りでも「咳がなかなか止まらない」という相談が増えてきました。
そこで、呼吸器感染症の中でも、長引く咳を特徴とするマイコプラズマ肺炎百日咳は、症状が似ているため臨床現場でも鑑別が重要です。
両者は原因菌や感染経路、治療薬、予防法まで異なります。本記事では、最新の知見も交えて詳細に解説します。


1. 原因菌と特徴の違い

項目マイコプラズマ肺炎百日咳
原因菌Mycoplasma pneumoniae(細胞壁を持たない細菌様微生物)Bordetella pertussis(グラム陰性桿菌)
主な感染経路飛沫感染飛沫感染(咳・くしゃみ)
好発年齢学童〜若年成人乳幼児(重症化しやすい)、ワクチン未接種者
潜伏期2〜3週間1〜2週間
主症状乾性咳嗽(長
引く)、発熱、倦怠感、肺炎像
発作的連続咳嗽、咳後嘔吐、「笛声様呼吸」
画像所見胸部X線でスリガラス様陰影・小葉中心性陰影特異所見なし(肺炎像はまれ)
検査血清抗体価(PA、CF)、LAMP法、抗原検査PCR法、培養(特殊培地)、血清抗体価
細胞壁の有無なし(βラクタム無効)あり(ただしβラクタムはあまり使われない)

2. 潜伏期

  • マイコプラズマ肺炎:2〜3週間と比較的長く、集団生活でじわじわと流行が拡がる傾向があります。
  • 百日咳:1〜2週間で発症し、特に乳幼児やワクチン未接種者で重症化しやすいです。

IWAKI
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この潜伏期の違いで判断は難しいでしょう。周りに患者がいるかいないかですね。

3. 感染経路

どちらも飛沫感染が主体です。

  • 咳やくしゃみを介して飛沫が2メートル程度飛散
  • 特に密閉空間・長時間接触で感染リスク増加
IWAKI
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百日咳は感染力が強く、家庭内二次感染率が高いことが知られています。


4. 治療薬の違い

マイコプラズマ肺炎

  • 第一選択:マクロライド系
    • クラリスロマイシン(CAM)
    • アジスロマイシン(AZM)
    • エリスロマイシン(EM:出荷停止)
  • **マクロライド耐性株(増加傾向)**の場合
    • テトラサイクリン系(ミノサイクリン、ドキシサイクリン)
      8歳未満は原則禁忌(歯牙着色・骨形成阻害)
    • ニューキノロン系(レボフロキサシン、モキシフロキサシン)成人のみ
    • トスフロキサイン細粒(小児)
IWAKI
IWAKI

なんと!エリスロシンが入荷しない(2025年8月)治療の選択肢が狭まっている。

百日咳

  • 第一選択:マクロライド系
  • クラリスロマイシン(CAM)
  • アジスロマイシン(AZM)
  • エリスロマイシン(EM:出荷停止)
  • 代替薬:ST合剤(スルファメトキサゾール+トリメトプリム)
    • マクロライド禁忌や耐性時に使用
  • 抗菌薬は発症早期(カタル期)での投与が咳嗽期間短縮に有効
    痙咳期では症状改善は遅く、菌排除が主目的になります。

5. 隔離期間

  • マイコプラズマ肺炎
    法的隔離義務はありませんが、症状が強い期間は登校・出勤を控えることが望ましいです。
  • 百日咳
    学校保健安全法により、適切な抗菌薬投与開始から5日間は登校・登園不可。
    治療しない場合は咳発症から3週間は感染性が持続します。

IWAKI
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両方とも長い咳に苦しめられることがあります。

6. 予防法

共通

  • マスク着用
  • 手指衛生
  • 咳エチケット
  • 密閉空間・人混みの回避

百日咳特有

  • **ワクチン接種**が最も有効な予防法
    ジフテリア、百日咳、ポリオ、破傷風、インフルエンザB混合ワクチンです。生後2か月から開始し、通常3~8週間隔で3回接種、その後、3回目から6~18か月後に4回目を接種。定期接種スケジュールに沿って乳幼児期に接種することが重要です。

7. 鑑別のポイント

  • 咳が乾性で長引く+肺炎像+発熱 → マイコプラズマ肺炎を疑う
  • 発作的連続咳+咳後嘔吐+笛声様呼吸 → 百日咳を強く疑う
  • PCRや抗体検査で確定診断

 

8.感染力

マイコプラズマ肺炎

  • 感染力が最も強い期間
    発症してから約1週間が最も感染力が強いとされています。
  • 感染が続く期間
    潜伏期間中(発症前)からも感染する可能性があり、症状が治まったあとも4~6週間程度は菌を排出し続けることがあるため、注意が必要です。

百日咳

  • 感染力が最も強い期間
    症状が出てから**最初の2~3週間(とくにカタル期の約2週間)**が最も感染力が強いです。
    • カタル期とは:風邪に似た軽い症状(鼻水や軽い咳)の時期で、この時期は本人も百日咳と気づかず周囲に感染を広げがちです。
  • 感染が広がる範囲
    症状が出る約1週間前から、咳が出始めて3週間頃までに感染させる力があります。

まとめ

マイコプラズマ肺炎と百日咳は、症状が似ている一方で原因菌や、隔離基準が異なります。発熱は百日咳では少ないですが、しばしばマイコプラズマ肺炎では見られます。治療薬は両者ともマクロライド系が一般的ですが、現在エリスロシンが出荷中止(2025年8月)となっており選択肢が少なくなっています。クラリシッドは一緒に飲めない薬があるため注意が必要です。
臨床現場では正しい鑑別と早期治療が重要であり、百日咳では幼少期からのワクチンによる予防が何よりも有効です。

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