薬学生5年次のカリキュラムには、
11週間の薬局実習と11週間の病院実習が組み込まれています。
これは必修科目であるため、将来製薬会社や行政を志望している学生でも必ず履修する必要がある単位です。
では、この実務実習はどのような仕組みで実施されているのでしょうか。
この記事では、病院薬剤師の立場から実務実習のマッチングの流れを解説します。
実務実習は大学だけで決めているわけではない
実は、実務実習は大学が独自に決めているわけではありません。
**大学・保険調剤薬局・病院をつなぐ役割として「地区調整機構」**が存在します。
日本は以下の地区に分かれており、それぞれで実習調整が行われています。
- 北海道地区調整機構
- 東北地区調整機構
- 関東地区調整機構
- 北陸地区調整機構
- 東海地区調整機構
- 近畿地区調整機構
- 中国・四国地区調整機構
- 九州・山口地区調整機構
これらの機構が、大学・薬局・病院の実習受け入れを調整する役割を担っています。
実務実習マッチングの流れ
実務実習は主に次のような流れで決まっていきます。
① 保険薬局・病院への受け入れアンケート
3年次3月~4年次4月頃に、保険調剤薬局と病院に対してアンケートが実施されます。
確認される主な内容は次の2つです。
- 実習受け入れ可能人数
- 代表的8疾患への対応状況
代表的な8疾患は以下の通りです。
- がん
- 高血圧症
- 糖尿病
- 心疾患
- 脳血管障害
- 精神神経疾患
- 免疫・アレルギー疾患
- 感染症
これらの疾患をどの程度経験できるかも、実習先選定の重要な要素になります。
② 学生の実習希望調査
4年次の春頃になると、学生は実習先の希望を提出します。
選択できる内容は次の通りです。
- 実習の時期
- 薬局・病院
- 第三希望まで
各大学では基本的に**「ふるさと実習」が推奨されています。
そのため、多くの学生は出身県の実習施設**から選択します。
ただし例外として、
- 大学近辺の施設
- 特別な事情のある地域
などを希望する場合もあります。
③ 病院・薬局とのマッチング
4年次の夏頃からマッチング作業が始まります。
山形県の場合は
- 病院実習のマッチング
- 薬局実習のマッチング
という順番で行われます。
まず病院実習を決定する理由は、病院の受け入れ施設数が少ないためです。
マッチングで重要になるのは、
「学生の希望時期」と「病院の受け入れ時期」
です。
例えば学生がある病院を希望していても、
- その時期に受け入れをしていない
- 受け入れ人数を超えている
場合はマッチングが成立しません。
そのため、できるだけ
- 希望時期を変更せず
- 第三希望までの中で
調整を行っていきます。
山形県では大きく
- 庄内地区
- 新庄地区
- 村山地区
- 置賜地区
に分けて薬学生を振り分けています。
病院マッチングがすべて終了すると、薬局マッチングへ移行します。
このタイミングで、
病院担当から保険薬局担当へ調整業務が引き継がれます。
④ 再調整
マッチングは一度決まっても、最終確定まで調整が続きます。
例えば次のようなケースがあるためです。
学生側
- 4年次から5年次に進級できない(留年)
受け入れ側
- 指導薬剤師の退職
- 出産・育休
- 人員不足
こうした事情により、実習直前まで再調整が行われることもあります。
⑤ 実務実習スタート
4年次の最後に実施される
- CBT(Computer Based Testing)
- OSCE(客観的臨床能力試験)
に合格し、無事進級した学生が実務実習を開始します。
薬局実習 → 病院実習の順で実施されます。

実習受け入れには現場の思いもある
いかがだったでしょうか。
薬学生にとっては、
- CBT
- OSCE
- 進級試験
など大変なイベントが続きます。
一方で現場でも、後進育成のために多くの準備が行われています。
なお実務実習では、
就職を匂わせる行為は禁止されています。
しかし地方病院の本音としては、
「実習をきっかけに将来働いてくれる学生が来てくれたら嬉しい」
という気持ちがあるのも事実です。
だからこそ、薬学生に対して
薬剤師としての“背中”を見せられる実習を提供したいものです。

コメント