膀胱炎の治療と病態の理解|腎盂腎炎との違いも解説

病院薬剤師

こんにちは、IWAKIです。たまには仕事関連の話もしましょう。

非常に身近にある疾患「膀胱炎」(ぼうこうえん)は、特に女性に多くみられる泌尿器感染症です。
排尿時の痛みや頻尿など、日常生活にも支障をきたす不快な症状が特徴ですが、早期に適切な治療を行うことで、ほとんどは短期間で改善します。

この記事では、膀胱炎の病態治療方針、さらに似た症状を示す腎盂腎炎(じんうじんえん)との違いについても詳しく解説します。


膀胱炎とは?|病態と原因菌

膀胱炎は、尿を一時的に溜める器官である「膀胱」に細菌が侵入し、炎症を引き起こす病気です。

◆ 主な原因菌

もっとも多い原因菌は 大腸菌(Escherichia coli) で、全体の約80~90%を占めます。その他、クレブシエラ属、プロテウス属、腸球菌などが原因となることもあります。閉経前か閉経後で若干異なりますが、高齢になるにつれ抗菌薬が効きにくくなっていきます。

◆ 発症メカニズム

通常、尿道から膀胱へ細菌が侵入することで感染します。女性は尿道が短いため、膀胱に細菌が届きやすく、男性よりも圧倒的に多く発症します。


膀胱炎の主な症状

  • 排尿時の痛み(排尿痛)
  • 頻尿(1日に10回以上トイレに行くなど)
  • 残尿感
  • 下腹部の不快感
  • 尿が濃い

※ 高熱や腰痛を伴う場合は、膀胱炎よりも重症な「腎盂腎炎」の可能性があります。


疫学:膀胱炎は女性に圧倒的に多い

膀胱炎は全年齢の女性にみられる一般的な疾患ですが、特に以下の層で多く発症します。

理由
性成熟期の女性(20〜40代)性交渉やホルモン変動による尿道感染リスク上昇
妊婦子宮の圧迫により尿流が妨げられるため
高齢女性エストロゲン低下による膣・尿道粘膜の防御力低下
小児(特に女児)排尿習慣の未熟さや肛門周囲の衛生不良

男性は尿道が長く、外部からの感染が起こりにくいため、膀胱炎は稀です。ただし、前立腺肥大症など排尿障害を背景とした膀胱炎は高齢男性に見られます。


治療方針|抗菌薬による短期治療が基本

◆ 急性単純性膀胱炎の治療

健康な成人女性にみられる、腎機能障害や基礎疾患を伴わない膀胱炎は「急性単純性膀胱炎」と呼ばれます。

治療の第一選択は 抗菌薬の内服 であり、3〜5日間の短期投与で治癒が期待されます。

閉経前では下記のように

ペニシリン系またはニューキノロン系を優先して治療を開始します。しかし閉経後では

ニューキノロンへの耐性率の上昇がみられるため、ペニシリン系又はセフェム系での治療が主になります。妊婦に対しては

◆ 再発性膀胱炎・複雑性膀胱炎

・同じ細菌による繰り返し感染
・腎機能障害や糖尿病を伴う
・尿路結石やカテーテルがある場合などは「複雑性膀胱炎」として長期治療や精密検査、入院点滴治療が必要になります。


腎盂腎炎との違い

膀胱炎と腎盂腎炎はいずれも尿路感染症ですが、重症度や治療方針が大きく異なります。

項目膀胱炎腎盂腎炎
主な部位膀胱腎盂・腎実質
原因菌大腸菌など同左
発熱ない or 軽度(37〜38℃)高熱(38.5℃以上)・悪寒あり
痛みの場所排尿時の痛み、下腹部不快感腰痛・側腹部痛
血液検査通常不要CRP・白血球↑など炎症所見あり
治療期間3〜5日間の抗菌薬内服入院も考慮し、点滴治療が必要な場合あり

腎盂腎炎は放置すると敗血症など命に関わる合併症を起こすことがあるため、自己判断せず医療機関を受診することが重要です。


自己判断は禁物|こんなときは必ず受診を

膀胱炎のような症状があっても、以下のようなケースでは早急な医療機関の受診が推奨されます。

  • 38℃以上の発熱や寒気がある
  • 腰や背中に強い痛みがある
  • 血尿が続く
  • 妊娠中または基礎疾患(糖尿病など)がある
  • 抗菌薬を飲んでも改善しない

再発予防のポイント

膀胱炎は再発しやすい疾患でもあります。日常生活での予防も大切です。

  • 十分な水分をとり、尿を我慢しない
  • 性交後は排尿を行う(尿道からの菌排出)
  • デリケートゾーンを清潔に保つ
  • 下着は通気性の良い綿素材を選ぶ
  • 冷えを避ける

まとめ

膀胱炎はよくある疾患ですが、放置すれば腎盂腎炎に進行する恐れもあるため、正しい知識と早めの対応が重要です。

  • 主な原因は大腸菌などの細菌感染
  • 健康な女性の膀胱炎は3〜5日間の抗菌薬で治癒
  • 高熱や腰痛があれば腎盂腎炎の可能性も視野に
  • 再発予防には生活習慣の見直しも効果的

膀胱炎の症状を感じたら、早めに医療機関を受診し、確実な診断と治療を受けましょう。

 

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