感染制御認定薬剤師が解説 臨床で活用されるアンチバイオグラムの作成と運用

感染制御認定薬剤師

抗菌薬適正使用(AS)の推進において、アンチバイオグラム(Antibiogram)は欠かせない基盤データである。
経験的抗菌薬治療の選択において、「自施設ではどの菌に、どの抗菌薬がどの程度有効か」を示すアンチバイオグラムは、医師の意思決定を支援する重要なツールである。

一方で、作成はしているものの、
・実臨床では参照されていない
・院内掲示のみで運用が不十分
・病院機能評価で使用方法を説明できない
といった課題を抱える施設も少なくない。

本記事では、感染制御認定薬剤師の立場から、JANISおよびJSIPHEを活用したアンチバイオグラム作成と、院内で実際に使われるための運用の工夫について解説する。


アンチバイオグラムの意義

アンチバイオグラムは、一定期間に院内で分離された菌と抗菌薬感受性を集計したものであり、主に以下の目的で使用される。

  • 初期経験的治療における抗菌薬選択の参考
  • 自施設における耐性菌動向の把握
  • ガイドラインと院内実態のすり合わせ
  • 抗菌薬適正使用に関する院内共通認識の形成

特に培養結果が判明する前の初期治療において、アンチバイオグラムは客観的な判断材料として有用である。


JANIS・J-SIPHEを用いた作成

現在、多くの医療機関では

  • JANIS(院内感染対策サーベイランス)
  • J-SIPHE(感染対策連携共通プラットフォーム

を用いてアンチバイオグラムを作成することが可能である。

JANIS・J-SIPHEを用いる利点

  • 検査室データを基盤とした客観性
  • CLSIに準拠した感受性判定
  • 病院機能評価や外部評価で説明しやすい
  • 継続的なデータ蓄積が可能

当院では、検査室と連携し、前年度1年分のデータを用いてアンチバイオグラムを作成している。
検査部門との協力体制を構築することで、データの信頼性確保と作成業務の円滑化につながる。


院内で「使われる」ための工夫

アンチバイオグラムは、作成しただけでは意味を持たない。
臨床現場で参照され、抗菌薬選択に活かされて初めて価値が生まれる。

院内掲示

院内掲示は基本的な取り組みである。

  • 医局前
  • ICT関連資料コーナー
  • 病棟カンファレンス室

など、医師の目に触れる場所に掲示することで認知度は高まる。

電子カルテ上での活用

より重要なのが、電子カルテ上での表示である。

  • 電子カルテ内にアンチバイオグラム(PDF)を格納
  • 抗菌薬オーダー時に参照しやすい場所へ配置
  • ICTポータルやリンク集から即時アクセス可能とする

抗菌薬を処方するタイミングで自然と目に入る導線を作ることで、参照率は大きく向上する。


共有の場を意識した運用

アンチバイオグラムは、多職種・複数部署で共有されてこそ効果を発揮する。

当院では以下の場で共有を行っている。

  • 院内ICT
  • 医局会
  • 連携病院とのカンファレンス

特に医局会での共有は、抗菌薬選択の背景をデータで説明できるため、医師の理解を得やすい。
「なぜこの抗菌薬が第一選択なのか」「なぜこの薬は控えるのか」を可視化できる点は大きな利点である。


病院機能評価への対応

病院機能評価では、アンチバイオグラムの有無だけでなく、運用方法が問われる。

  • 誰が作成しているのか
  • どのような場面で使用されているのか
  • 抗菌薬適正使用にどう活用されているのか

電子カルテ上での活用、ICT・医局会での共有といった具体的な運用を説明できることが重要である。

作成→共有→活用 の流れをしっかり説明できることが肝要です。


作成時に参考とする指針

アンチバイオグラム作成にあたっては、

  • CLSIのアンチバイオグラム作成指針
  • JANIS・J-SIPHEの公開資料
  • AMR対策アクションプラン関連資料

などを参考にする。

特に、菌株数や集計期間を意識し、臨床で解釈しやすい形にまとめることが重要である。


意義と使用方法の明示

アンチバイオグラムには、簡潔な説明を添えることが望ましい。

  • 対象期間
  • 使用目的(初期経験的治療の参考)
  • 使用上の基本的な考え方

詳細な解説は不要であり、誰が見ても直感的に理解できる内容を意識する。


アンチバイオグラム例

  • 視認性
  • 情報量の適切さ
  • 医師が即座に活用できる構成

を重視した形式としている。JANISからデータ収集し作成した例。


まとめ

  • アンチバイオグラムは臨床で使われてこそ意味を持つ
  • JANIS・J-SIPHEと検査室連携が作成の基盤
  • 電子カルテ上での表示が活用促進の鍵
  • 病院機能評価では運用方法の説明が重要
  • 感染制御認定薬剤師の役割は、データを臨床につなげることである
IWAKI
IWAKI

アンチバイオグラムの作成は保健所の立ち入りの際によく確認されますが、しっかり活用されているかは各施設での課題となっていることが多いと思います。作成→共有→活用をしっかりしていきましょう。

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