ニューキノロン系経口薬の徹底解説!第三・第四世代を中心に特徴と注意点をまとめました

感染症

はじめに

ニューキノロン系抗菌薬は、広範囲にわたる抗菌スペクトラム良好な組織移行性を特徴とする抗菌薬であり、経口薬としても非常に有用です。中でも第三・第四世代は「レスピラトリーキノロン」と呼ばれ、呼吸器感染症での使用頻度が高くなっています。

今回は、日本で使用されている代表的なニューキノロン系経口薬を中心に、そのスペクトラム、特徴、注意点、小児への適応などを整理します。


ニューキノロン系とは?

●作用機序

グラム陰性菌に対してはDNAジャイレースまた、グラム陽性菌に対してはトポイソメラーゼIVを阻害し、細菌のDNA複製を阻止することで殺菌的に作用します。

●特徴

  • 広い抗菌スペクトラム(G陽性・G陰性)
  • 嫌気性菌、緑膿菌へのスペクトラム
  • 高い組織移行性
  • 経口と静注で血中濃度がほぼ同等(スイッチ療法に有用)

IWAKI
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下記でも解説するけど、結核、緑膿菌、嫌気性菌などスペクトルが非常に広いのが特徴だけど、近年耐性化も深刻になっているよ。

世代別の特徴と「レスピラトリーキノロン」

世代主な薬剤特徴主な適応
第2世代シプロフロキサシンなどG陰性菌に強い尿路感染症、腸管感染症など
第3世代レボフロキサシン(LVFX)
ガレノキサシン(GRNX)
ラスクフロキサシン(LSFX)
G陽性菌(肺炎球菌)への効果が向上呼吸器感染症(市中肺炎、副鼻腔炎など)
第4世代モキシフロキサシン(MFLX)
シタフロキサシン(STFX)
嫌気性菌にも抗菌力を示す呼吸器・腹腔内・婦人科感染症など

●レスピラトリーキノロンとは?

第三世代以降のうち、肺炎球菌や非定型肺炎病原体(マイコプラズマ、クラミジア)に有効で、呼吸器感染症に適するニューキノロンを指します。以下の薬剤が該当します:

  • レボフロキサシン(LVFX)
  • モキシフロキサシン(MFLX)
  • ガレノキサシン(GRNX)
  • ラスクフロキサシン(LSFX)
  • シタフロキサシン(STFX)
IWAKI
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第三・四世代ニューキノロン系薬はレスピラトリーキノロンとも呼ばれ上気道への活性が非常に強い上、シタフロキサシンは横隔膜より下部の感染症にも適応を有しているよ。


スペクトラム比較表(主な経口薬)

薬剤G陽性G陰性嫌気性菌非定型緑膿菌特徴
LVFX(クラビット®)×スタンダードな呼吸器キノロン
TFLX(オゼックス®)小児適応あり(錠と細粒で適応異なる)
MFLX(アベロックス®)××胆汁排泄型、禁忌あり注意
GRNX(ジェニナック®)××呼吸器特化、肺炎球菌に強い
LSFX(ラスビック®)××呼吸器感染に有効
STFX(シタフロキサシン)嫌気性菌含む非常に広範囲

◎:非常に活性がある 〇:活性がある △:一部の菌種に活性がある ×:活性がない 

IWAKI
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上の表は各薬剤の適応菌種を基に作成しています。in vitroの結果では第4世代ニューキノロン系ではほとんどすべての嫌気性菌、緑膿菌に活性が見られました。(各種インタビューフォームより)

注意点:便利だからこそ気をつけたい副作用と使用制限

●1. 結核との誤診に注意

ニューキノロンは結核菌にも抗菌活性を持つため、結核に気づかず使うと一時的に症状が改善し、診断が遅れることがあります。画像診断や喀痰検査での除外が大切です。

●2. 安易な処方による耐性リスク

ニューキノロン耐性菌(特に大腸菌や肺炎球菌)は増加傾向。必要な場合に限定して使うことが原則です。

●3. キレート形成による吸収阻害

カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などと同時摂取すると吸収が著しく低下します。服用タイミングに注意。

●4. QT延長などの不整脈リスク

特にモキシフロキサシン(MFLX)ではQT延長のリスクがあり、既存の心疾患がある患者や抗不整脈薬との併用には注意。また、低カリウム血症にも禁忌となっています。

●5. 腱障害、骨形成不全(特に小児)

ニューキノロンは軟骨形成障害や腱断裂との関連が知られ、これが小児に原則禁忌とされる理由です。

IWAKI
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親御さんの余ったニューキノロン系薬を風邪気味のお子さんに絶対飲ませてはいけない!


小児に使えるニューキノロンは?

ニューキノロン系は基本的に小児には禁忌ですが、**トスフロキサシン(TFLX:オゼックス®)**のみ小児に適応があります(中耳炎など)。ただし、適応症と年齢制限があるため慎重な使用が必要です。


まとめ:正しく使えば非常に有用な薬剤群

ニューキノロン系は、適切な感染症に対して使えば非常に高い治療効果を発揮します。
しかし、耐性菌の拡大や重篤な副作用リスクも無視できません。薬剤師・医師の立場から、適応の見極めと服薬指導を徹底することが求められます


参考文献・添付文書

  • 医薬品インタビューフォーム
  • 各社添付文書
  • 日本化学療法学会 抗菌薬使用ガイドライン

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