【感染制御認定薬剤師が解説】アメリカで流行している麻疹について徹底解説|感染状況と背景・対策

感染症

はじめに

2000年に「麻疹(はしか)の根絶」を達成したアメリカ。しかし、2025年には再び流行が広がり、 30年以上ぶりの高水準の感染者数が報告されています。 本記事では、麻疹(はしか)について、最新のデータや原因、対応状況、そして今後に向けた展望を解説します。

麻疹(はしか) Measles(Rubeola)

原因微生物

パラミクソウイルス科 麻疹ウイルス RNAウイルス エンベローブなし

感染経路

空気感染

潜伏期間

平均11日(10~12日) 【学校保健安全法 登校可能日 解熱後3日後】 

好発年齢

1~5歳

病期

カタル期-発疹期-回復期

診断

地域や集団内での流行、カタル症状、コプリック斑、発疹

白いまだら模様 コプリック班

治療

対症療法、自然治癒

隔離期間

接触後5日~発疹出現後5日間

発症予防

生後12か月以上でMRワクチンを接種。【MRワクチン 1-2歳で1回接種 学校就学前に1回接種】

緊急の場合:麻疹患者と接触後72時間以内ワクチン接種で発病を予防できる(阻止率93%)。ワクチンが接種できない場合は、接触後6日以内免疫グロブリンを接種することで予防ないし軽症化(阻止率55-100%)

日本の状況

日本のはしかも根絶はされておらず、週に0~15人程度の感染者が認められています。

流行状況:2025年、記録的な麻疹の大流行へ

米国内での急増と流行規模

  • 2025年1月から7月中旬までに、1,300例以上の麻疹が確認。
  • 7月4日時点で1,277例、そのうち西テキサス州が753例を占める。
  • 死者も報告され、33年ぶりの大流行とされています。

地域別の流行拡大

特にテキサス州を中心に、南西部のコミュニティで集団感染が多発しています。 WHO(世界保健機関)によれば、アメリカ大陸全体では2025年に入って2,318件以上の麻疹が報告されており、 そのうちアメリカ国内は800件超です。

なぜ再流行?背景にある要因

ワクチン接種率の低下

幼稚園児におけるMMR(麻疹・風疹・おたふく)【日本では未承認】の接種率はかつての95%以上から 92.7%へ低下。集団免疫の維持に必要な水準を下回っています。

地域やコミュニティの偏り

感染者の多くはワクチン未接種者であり、宗教的背景を持つ地域などで低接種率が顕著です。米疾病対策センター(CDC)によると、感染者の92%はワクチン未接種者、あるいは接種状況が不明なだった。

公共政策とワクチン懐疑派の影響

政策変更や「医療の自由」を掲げた運動により、ワクチン義務化が撤廃される動きもあります。 特にフロリダ州では、学校へのワクチン義務化撤廃が計画され、流行リスクが懸念されています。

ワクチンに元々懐疑的であったロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官は予防接種に関して米政府の公式勧告を出す諮問委員会のメンバー17人全員を解任しました。

公共衛生上の対応

CDCや地域保健機関はワクチン接種キャンペーンを強化し、WHOやPAHO(汎米保険機構)も監視体制を強化しています。

ワクチンへのアクセスと教育

強制的な義務化よりも、地域に根ざした教育や対話を通じた信頼構築が重要視されています。接種率向上には、VFC(Vaccines for Children Program)のように医療格差を埋めつつ、信頼できるプログラムによる接種推進が重要です。

将来への警鐘

現在の接種率が続けば、再び「根絶」状態を失う可能性が指摘されています。

世界的にも

はしかの大規模な流行は、イギリスなど他国でも報告されている。英イングランドでは昨年、2012年以来最多となる約3000件の感染が確認された。今年1月以降、イングランドでは529件の感染が報告されている。

カナダでもはしかの流行が続いており、2025年に入ってから3000件以上の感染が報告されている。大半はオンタリオ州とアルバータ州で発生している。

まとめ

  • 2025年、アメリカで最悪級の麻疹流行が発生(1,300件超、死者も報告)。
  • 再流行の背景はMMR接種率低下と公共政策の変化。
  • 流行の中心はワクチン未接種コミュニティと南西部地域。
  • 今後はワクチン接種促進と公衆衛生啓発が最重要課題。

参考文献

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