漫画『アオのハコ』は、三浦糀先生による青春ラブコメ×スポーツ物語。恋心・部活・友情・成長が交錯する等身大の高校生たちを描くその世界に、僕はすっかり心を奪われてしまいました。ここでは、その魅力を書き連ねてみます。

基本情報とあらすじ
- 連載開始:2021年4月、週刊少年ジャンプ。
- 作者:三浦糀先生。ジャンプ初連載作品と思しき部分もありながら、「恋愛・部活もの」の枠を超えてきちんと自分の色を出している作家さんです。
- 刊行巻数:2025年7月時点で21巻まで。最新巻ではバスケットボール部ウインターカップ2回戦、物語がスポーツの勝負どころに差し掛かっています。
あらすじ(簡単に)
主人公は、バドミントン部所属の高校1年・猪俣大喜。彼は一学年上の女子バスケ部のスター先輩、鹿野千夏に片思い中。ある日、千夏の両親が海外赴任することになり、千夏が大喜の家に下宿(同居)することに。これをきっかけに、ふたりの距離は急速に近づいていくが、恋愛だけじゃなく、それぞれがスポーツや自分自身と向き合いながら成長していく。部活動のライバルたち、友情、恋愛の三角関係、すれ違い、期待と不安……青春の“熱”がひしひしと伝わってきます。

僕が『アオのハコ』を好きな理由
1. 恋愛とスポーツのバランス
ただのラブコメでも、ただのスポーツものでもない。この作品のすごいところは、「千夏と大喜の恋」が物語の中心にある一方で、部活の勝負・練習・ライバルとの競争がちゃんと重みを持って描かれている点。千夏は女子バスケ部の次期エースとして期待され、大喜もバドミントン部で “インターハイ出場” を目指す。スポーツ描写がただの背景になっていないので、読んでいて“青春の重さ”“努力の意味”を感じられる。
スポーツ好きな読者にも、恋愛好きな読者にもちゃんと光を当ててくれる。僕の場合、「どちらかを我慢して恋愛を楽しむか、どちらも本気でやるか」という葛藤にグッと来ます。
2. キャラクターの“距離感”の描き方がうまい
大喜は千夏に憧れているけれど、最初は名前を呼ばれるだけで嬉しかったり、防寒具を渡すちょっとした優しさに胸がドキドキしたりする“初々しい”気持ちが丁寧に描かれていて、読者としても「あ、そうそうこういう感情あったな」と共感できる。
さらに、「同居」という設定が二人の関係を動かす大きな要素になっていて、ただの“偶然”や“ドタバタ”ではなく、お互いの生活を近くで見ることで生まれる感情や誤解・照れ・気まずさがリアル。それが恋愛にリアルな“間”を与えている。
また、幼馴染の蝶野雛や親友の笠原匡、ライバルたち・先輩たちも、ただの恋の邪魔キャラじゃなくて、それぞれの思いや事情があって行動していて、それがストーリーに深みを与えている。好きな人がたくさんいるのに、誰も嫌なキャラにならず、それぞれ応援したくなるのがいい。
3. 描写・心理の細やかさ
“朝練で千夏が寒そうにしていたところを防寒具を貸す”とか、“千夏のささやかなボディタッチ”など、小さな場面が物語のターニングポイントになっていたり、キャラクターの心の揺れを描く引き金になっていたりする。
スポーツの試合シーンや練習のシーンも、ただ結果だけを追うのではなく、“何をこの練習で課題と感じていたか”“どの瞬間に自信を持てたか”“仲間との協力や励まし合い”が見えるので、勝負そのものよりもそこに至る過程がとても魅力的。
4. 絵と雰囲気の良さ
まず、千夏がかわいい・・・。絵が好きすぎる・・・。
三浦糀先生の絵は、キャラクターの表情・仕草・空気感がしっかり描かれていて、少女漫画の甘さと少年漫画の爽やかさが融合している感じ。恋愛の甘酸っぱさも、スポーツの汗と緊張も「画」で伝わる。
また、物語のテンポもいい。焦らず、でもだれてもいない。ひとつひとつのイベント(同居、告白、試合、練習会、文化祭など)が丁寧に重ねられていて、それぞれが意味を持っていて、読後感がきれい。
5. 読者に残る“甘さ”と“切なさ”
恋が進むときの嬉しさ・緊張・期待と、すれ違いや思い悩む時間。それらのバランスがとても良い。「告白できるか・通じるか」という不確実性がずっと続くけど、それが読んでてハラハラ・「早く次巻出てほしい!」という気持ちにさせる。恋愛物にありがちな“早すぎる進展”や“ご都合主義”が少ないというか、進展に重みがあるので、胸に響く。
6.主題曲が最高
アニメも配信されており、エピソード1の主題曲「Official髭男dism Same Blue」がマッチしていてアニメのイントロもすべて見たくなってしまいます。「青さ」を表現した曲でとても共感できる内容となっています。

私はアニメから入り漫画を読みました。絵が好きすぎて見よう(読もう)思いました。
気になる点
好きな作品だからこそ、少し「ここがもうちょっと…」と思う部分もあります。
- 恋愛の三角関係による重み
雛の片思いや、千夏と大喜の秘密の同居など、複数の感情線が絡み合っているため、人によっては“やきもき”が過ぎると感じることも。進展の遅さをストレスに感じる読者もいるかも。 - スポーツ描写の偏り
バスケット部・バドミントン部の描写はリアルでいいけれど、それぞれの対戦校やチームメイトの内面がもう少し描かれていると、もっと厚みが出るのになと思うことがある。 - “秘密”設定の継続
千夏が大喜の家に同居していることを周囲に隠している設定はドラマを生むけど、あまりにも秘密がバレなさすぎたり、偶然を重ねすぎたりする展開は「ちょっと現実離れしてるな」と思う時がある。
三浦先生が敢えてここは表現していない部分、ということでもあろうが物語の展開のスピードを考えるとバランスが取れているのかもしれない。私としてはもっと細かく描写してほしかった部分もあるかな。
最新巻・これからの見どころ
2025年10月に最新巻(22巻)が発刊されることが発表されている。ウィンターカップの2回戦以降と大喜と千夏の進展、雛や匡の今後の恋の展開も期待されるところです 。
主人公・大喜自身のバドミントンでの遊佐との戦いも見逃せない。
アニメ化第2期の制作も決定されており、声優・作画・演出によって原作の魅力がどこまで映像で再現されるか、ファンとして期待が高いところです。
“アオのハコ”が特に心を打つ瞬間(僕のベストシーン)
- 千夏が大喜の家に同居し始めたシーンでの「ささやかな気まずさと新しい日常の始まり」の描写。心の中で「この先どうなるんだろう」とワクワクする瞬間。
- 大喜が朝の体育館で千夏を見かけて防寒具を貸すシーン。これほど小さな行動がその後の関係性に大きな影響を与えていくんだなあと感じた。
- 試合のシーンでの緊張感と、「勝ちたい」という気持ちだけでなく「自分は何を大切にしているか」が見えてくる場面。スポーツ熱が恋の甘さと混ざるところが“アオのハコらしさ”だと思う。
- 雛の告白、そしてその後の雛と千夏、大喜の三人の関わり合い。嫉妬とか遠慮とか、友情とか、恋愛感情とかが複雑に絡み合うところが、見ていて痛いけど応援したくなる。
総評・おすすめポイント
僕の中で『アオのハコ』は、「甘酸っぱさをたっぷり含んだ青春ラブコメ」としてだけでなく、「好きな人を応援したくなるスポーツ漫画」でもあります。恋愛のドキドキ、部活のしんどさ、仲間との連帯感……それらをバランスよく、丁寧に描いてくれるので、読後感がほっとする作品。
こんな人におすすめ:
- 高校時代を振り返して「もっとああすればよかったな」と思う人
- 恋愛漫画のご都合主義が少ないものを読みたい人
- スポーツものの熱さ+恋愛ものの甘さ、両方味わいたい人
- ゆっくりキャラクター同士の関係の“間”を楽しみたい人
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